ところが、あのミュージック・ビデオを見てから、体はまるで神様が乗り移ったかのように震え、躍動した。
心から興奮した。
それは、マイケル・ジャクソンのミュージック・ビデオ『スリラー』だ。
これを見てからというもの、メロディーと映像が、現実の生活の中にまで出現するようになった。
いい意味での、呪いのミュージック・ビデオだった。
このビデオを見たたいていの人は、初期症状として体の小さな震えを発症し、やがて何かに力を与えられたかのように動き出す。
それは、『ビリー・ジーン』であったり、『ムーンウォーク』であったり、『ビート・イット』であったり……などなど。
大きな体の動きが渦となって、己の身に降りかかる。
あれは、マイケルの精神が込められたミュージック・ビデオだった。
◇
あのビデオを見てから、だれもが言う。
「おいらはマイケルさ! ほら、どうかな? ムーンウォーク!」
それはたいてい、マイケルとは似ても似つかないものではあったが……。
――しかし、本人だけは、世界中の観客を熱狂させていた。

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