大きな山の麓にある湖で、一匹の魚が泳いでいた。
魚「あーあ、おいらはここから出られないから、外の世界が分からなくてつまらないや」
魚は頭を水面から精いっぱい突き出し、辺りをキョロキョロと見回した。
魚「うおっ、あんなに大きなやつがいるぞ。さぞかし、遠くまで見渡せるんだろうなあ」
魚は山を羨ましく思った。
魚「おーい、山さん! あんたはいいなあ。遠くまで見渡せて」
すると、山は魚を見つけて声を掛けた。
山「なんだ、おまえさんかい? わしに声を掛けたのは」
山が話したので、魚は驚いた。
魚「あんたは山なのに、話ができるんだ。すごいな!」
山「ああ、わしは人間から『富士山』として崇められているからな。特別なのじゃ」
山が人間から崇められていると聞いて、魚は人間を見てみたくなった。
魚「おいらも山さんみたいに、人間とやらに大事にされたいなあ」
そう思っていたとき、魚の目の前に、おいしそうな虫がぷかぷかと浮かんできた。
魚「おっ、うまそうだ!」
魚が勢いよく虫に食いついた、その瞬間――。
口に何かが引っ掛かった。
魚の体は、水の中から空高く舞い上がった。
魚「あららーっ! もしかして……あんたが人間かい? そんなにおいらに会えて嬉しいのかい? おいらも嬉しいよ!」

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