「わたしはどこまでも走る馬。人はわれをアマネスクと呼ぶ……」
そう言い放つと、大草原を前にして立つ栗毛の駿馬は、威風堂々と青空を見上げた。
とはいえ、銅像としてそのような姿に造られたのだから、馬はいつも空を見上げていた。
いや、それ以外のことはできなかった。
人々をそれぞれの目標へと導くこと。それが自分に与えられた使命だと、彼は十分に認識していたはずだった。
しかし、どれほど強くそう思っていても、銅像である彼には、誰かに話しかけることさえできなかった。
◇
「みなさーーーん、こちらは伝説の名馬といわれたアマネスクの銅像でーす!」
甲高い声を張り上げる観光ガイドは、二十名ほどのツアー客を引き連れて案内していた。
「さぞかし、すごい馬だったんでしょうねぇ。銅像になるくらいですもの、きっとすごかったのよ」
「あら、そうかしら? ただの馬じゃないの? 何がそんなにすごいっていうの……。ガイドさん、この馬って何がすごいの?」
ツアー客たちは目の前の銅像を眺めながら、それぞれ勝手気ままに名馬の姿を想像していた。
「天を見上げた名馬は人を希望の彼方へ導くと言われております」
「へえー そうなの」
「この馬にはその力があるからこそ、自らは日本ダービーを制し、出場するレースで次々と優勝。前人未到の記録を打ち立てました。生涯の獲得賞金は一兆円を超えたという、伝説の名馬なんです!」
「へえ、馬なのに、前人未到?」
「ダービーは騎手の手腕も大きいですからね。とにかく、すごい記録です」
「人馬一体というわけね」
ツアー客たちは名馬の偉業に感心し、改めて銅像を眺めていた。
そのとき、名馬は沈黙をついに破った。
「そんなに稼いだのに……。なぜ『純金』で造ってくれなかったんだよ。やってられないよ」

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