僕は夜が怖い。
どこにでもある共同住宅に住んでいる。
五階建ての鉄筋コンクリート造り。オートロックなんてものはない、築四十年の古びたアパートだ。
◇
引っ越してきて二年ほど経った頃のことだ。
午前二時になると、足音が聞こえるようになった。
最初は、「こんな時間に帰宅する人もいるんだな」程度にしか思っていなかった。
ところが、足音は次第に大きくなっていった。
眠気でぼんやりしていた僕は、布団から上半身を起こし、耳を澄ませた。
「ウソだろ?」
思わず声が出た。
近づいてきた足音が、僕の部屋の玄関前でぴたりと止まったのだ。
僕はそのまま布団をかぶり、眠ることにした。
◇
さすがに、一週間も足音が僕の部屋の前で止まるとなると、気になって仕方がない。
不快感とストレスが、日に日に募っていった。
「誰のいたずらだ!」
僕は翌日、意を決した。
午前二時になる一分前、玄関のドアスコープを覗いて、犯人を突き止めてやろうと思ったのだ。
そして、午前二時。
僕は息を殺し、ドアスコープを覗いた。
……それ以来、足音は聞こえなくなった。
あれは一体、何だったんだろう。
◇
あれから一週間。
静寂の中、平穏無事な日々が過ぎていった。
午前二時になっても、もうあの足音は聞こえてこない。
僕は、ほっと胸をなで下ろした。
「ふん、さすがにいたずらをやめたか……」
そうつぶやきながら、僕は何気なくドアスコープを覗いた。
「うわぁーーーーーーーーっ!」

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