僕の家には、太郎という名前のオスのコーギーがいた。
とても活動的で、人懐こくて、愛嬌のある犬だった。
僕が仕事から帰り、玄関のドアを開けようとすると、ドアの向こうから足音が近づいてくるのが分かる。
カシャカシャカシャ……
フローリングの床を爪が擦り、辺りに軽快な音を響かせながら、太郎がやってくる。
僕は彼の顔を早く見たくて、思い切りドアを開ける。
しかし、いつもそこにいた彼は、もういない。
去年の夏、17歳で天国へ旅立った。
随分、長生きしてくれた。
また、暑い夏がやってきた。
今年は、暑さに喘ぎ、苦しそうにしている彼はいない。
毎日、僕を出迎えてくれた彼は、もういない。
ワン。
彼の「ワン」は無敵だった。
どんなシーンでも、「ワン」で済んだ。
彼の「ワン」は消えてしまったけれど、僕の心には、あの元気な「ワン」が今も聞こえてくる。
ワン。
「やっぱり聞こえる」

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