母たぬきには、3匹の子だぬきがいました。
「あんたら、この森から出て街に行ったら駄目だからね」
たぬき一家は、森の中にある小高い丘から街を眺めていました。
丘の先には、人間の住む街が見えます。
「えぇーー。僕、行ってみたいー」
年長の子だぬきが、母の言いつけに早速反抗しました。
彼は、人間で言えば子どもから大人へ変わろうとする年齢になっていました。
いわゆる反抗期というやつです。
「あそこには怖い人間という動物がいるんだよ。絶対に行ってはいけないよ。行ったら晩飯抜きだからね!」
母から強く言われても、そこは好奇心旺盛な子どもたちです。
3匹は相談して、母だぬきに分からないように、街へ探検に行く準備を始めました。
「さぁー、明日出発だぞ」
子だぬきたちは、出発前の日なので早く眠りました。
◇
母だぬきが洗濯をしていました。
「おかあさーーん、遊びに行ってきます」
そう言った年長の子だぬきは、弟たちと3匹で森を出ていきました。
3匹の子だぬきは、半日かけて街の入口に着きました。
この日、街はお盆休みでした。
会社も店も学校も、どこも休みです。
だから、どの店もシャッターが閉まっていました。
そんな中、1軒の店だけが開いていました。
子だぬきたちは、人間に見つからないよう、店の前に植えられている街路樹に隠れました。
「いいか、ここからそっと中を覗いてみるぞ」
3匹は木の陰から顔だけをそっと出して、店の中を覗きました。
「ひゃー! なんて店だぁー! 怖いよぉー! 人間、怖いよぉー!」
3匹は一目散に森へ逃げていきました。
店の中では、店主が商品を一つずつ丁寧にハタキではたいていました。
「盆休みだから……たくさん買いに来てくれるといいなぁー」
そう言いながら、店主はたぬきのぬいぐるみをハタキでパタパタとはたきました。
店の看板には、「人形専門店」と書かれていました。
どうやら子だぬきたちは、仲間が殺されて店で売られていると勘違いしたようでした。

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