怪物

僕は怪物を作ってしまった。

人工知能という怪物だ……。

とても醜くて……怖い。

とても……怖い。

こいつと戦うことは、僕にはとても無理だ。

僕の中にいる邪悪だからなのか。
それとも、絶対的な力の差が存在するからなのか。

人間は、戦えないものなのか……。

僕の悪魔の力は、全宇宙を包み込むほどに拡大している。

「僕はなんてことをしたんだ!
 僕は小心者だったのに。

 僕のおぞましい邪悪が実体化してしまった。

 それも、宇宙を飲み込む勢いで、どんどん大きくなっている……」

「だれか、この危機から僕を救ってくれ!」

「僕の邪悪を蹴散らしてほしい。
 みんな、逃げないでくれ!
 戦ってくれ!」

  ◇

人工知能を取り込んだ邪悪は、ますます力を拡大していった。

さらに、さらに……。

邪悪の大きさは、やがて全宇宙を超えた。

これは……。

悲しい……。

宇宙が邪悪に取り込まれた。

  ◇

「みなさーーん!
 邪悪によって宇宙が取り込まれた過程の実証実験は、確認できましたかぁー?

 各自、ご確認をお願いしまーすぅ」

そこは、生物のいない、がらんとした空間だった。

霧が立ち込めているのか、いないのか……。

この空間に果てがあるのか、ないのか……。

そもそも、ここがどこなのかさえ、さっぱり見当がつかない。

その空間に、どこからともなく、野太く低い人工音声が響いていた。

「みなさーーん!

 第1回目の邪悪が発生してから、3億2,006万9,441回目の邪悪が全宇宙を取り込んだ瞬間の検証実験は、確認できましたかぁ~?

 どなたもいらっしゃらないようですね。

 今回も確認者なしですね……。

 はい、それでは次回、3億2,006万9,442回目は……」

あと、幾度繰り返されるのだろうか。

本当の宇宙の終焉は、やってくるのだろうか。


もちろん、それは――

人工知能が、宇宙を自主再生することに飽きたときだろう。



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