最後の栗

もうすぐ寒くなる……。

寒波が地上にやって来る。
毎年、律儀にやって来る。

リスは寒波が大嫌いだ。

彼はこれまで、八度の寒い冬を知恵と工夫で乗り越えてきた。

「寒いなぁーー。でも、今年もたくさんの栗を集めたから楽勝さ!」

彼はアジトにため込んだ栗を眺め、ほっと胸をなで下ろした。

「寒い冬なんて、この蓄えがあれば乗り切れるさ」

今年も八度目の冬を、無事に乗り越えるつもりだった。

それが……。

それなのに……。

  ◇

なぜか今年は、寒い冬がもうすぐやって来るというのに、リスのアジトには栗が集まらなかった。

「なんでぇーーー!」

足元に転がっている栗は、たったの二十個。

例年なら、穴の中いっぱいに敷き詰められているはずだった。

毎年、山のように積まれた栗を眺めながら、鼻歌を歌っていた。

それなのに……。

リスは最後の一個を口に入れた。

すると、かつて栗に囲まれていた幸せな時間が、ふと蘇ってきた。

「もう、僕、食べられましぇーーーん!」

記憶の中には、口いっぱいに栗を頬張っていた、欲張りな自分がいる。

「ほんと、食べられましぇーーーーん」

あのときも栗を頬張りすぎて、喉に詰まらせ、苦しい思いをした。

その感覚が、今、まったく同じように蘇ってきた。

そしてリスは、たった一個の栗を喉に詰まらせて、息を引き取った。

その顔は――

精一杯生きた者の、満足そうな顔だった。


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