ウォルト・ディズニーが生み出したミッキーマウスは、子どもからお年寄りまで、誰からも愛されていました。
人間だけではありません。
町の排水口に住む汚らしいドブネズミも、ミッキーマウスに憧れていました。
「いいなぁーー。あいつって、めちゃくちゃ可愛いじゃないか。おいらも、ああなりたいなぁ。いつかアメリカへ行って、成り上がって、ミッキーの人気を追い抜いてやるぞ!」
そのとき、彼は自らを「ニッキーマウス」と改名しました。
そして、仲間たちに自分の夢を宣言しました。
「おいら、アメリカに行って、ウォルト・ディズニー社に入社して、人気キャラクターになってやるんだ!」
ニッキーは仲間たちに、その壮大な野望を語りました。
「いやぁ、おまえ、大したもんだな」
「おまえなら、いつかなれるぞ」
「応援しているからな」
「身の程をわきまえろ!」
「しょせん、ドブネズミはドブがお似合いなんだ」
仲間のねずみたちは、ニッキーマウスを激励する者もいれば、憐れむ者もいました。
大志を抱いてはいたものの、彼は所詮ただのドブネズミ。
これといった取り柄もありませんでした。
しかも、彼にとって最大の障壁は、アメリカへ渡るどころか、今いるドブから脱出する方法すら分からないことでした。
いたずらに月日は流れていきましたが、彼には一向にいい考えが浮かびません。
来る日も来る日も夢のことばかり考えていたため、日常生活に必要な注意力まで失ってしまったのです。
彼にとっては、野望を追いかけることよりも、目の前の日常を生きることのほうが難しかったのでした。
「あれ? なんだ、この部屋……。出られないぞ!」
可哀想に、ニッキーはついに、ねずみ捕りの罠にかかってしまったのです。
以後、ニッキーマウスは、
「壮大な野望を抱いたねずみ」
として、仲間たちの間で語り継がれたのでした。

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