彼は、かれこれ千年ほど生きていた。
「おお、おまえさん、ずいぶん長生きしたのう。感心、感心」
そう言うと神様は、ネコに褒美を授けた。
ネコの体はみるみる巨大になった。
海より広く、山より大きく、雲より高い。
誰もが見上げるほどの大きさになった自分を、ネコは誇らしく思った。
「ふむ……。千年生きた俺様には、このくらいの貫禄がちょうどいい」
しかし、以前から彼を知る動物たちは、今では豆粒ほどの大きさになってしまった。
しかも、彼の全身を見るには何日も離れた場所まで歩かなければならない。
もっとも、話をするだけなら近くで十分だった。
「昼寝は、やっぱり屋根の上が一番ですよ」
「昨日、生意気なネズミをこらしめてやりましてね」
そんな他愛のない世間話ばかりである。
ネコは歩くたびに動物たちを踏み潰しかねないので、ほとんど動けなくなった。
ただ、じっと横たわっているしかない。
「せっかく大きくなったのに、この体、持て余してるじゃないか……」
ある日、人間たちが彼の尻尾を丘だと思い込み、その上に城を築いてしまった。
「……これじゃ尻尾も動かせん」
とうとうネコは身じろぎ一つできなくなった。
長い年月が流れると、人々は彼を生き物ではなく、一つの山だと思うようになった。
「あの山、横になったネコみたいに見えない?」
そんな噂まで広まった。
その様子を眺めていた神様は、満足そうにうなずいた。
「いやはや、感心、感心。そこまで動かぬとは見上げたものじゃ」
神様は静かに微笑んだ。
「これなら、もう誰も踏み潰さんですむ」
そう言って、ネコを山にした。

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