「おい、アトムが始まるぞ! 急げ!」
昭和二十八年。テレビがやってきてから、僕らの毎日は一変した。
アニメだけじゃない。夜のプロレス中継なんて、もうお祭り騒ぎだ。
街の電気屋の前に、大人も子どももぎゅうぎゅう詰めに集まる。
巨漢の外国人を力道山が空手チョップでなぎ倒すたび、「うおおお!」と街が揺れた。
僕らは完全に、あの四角い箱の虜だった。
街の電気屋の前に、大人も子どももぎゅうぎゅう詰めに集まる。
巨漢の外国人を力道山が空手チョップでなぎ倒すたび、「うおおお!」と街が揺れた。
僕らは完全に、あの四角い箱の虜だった。
毎日まいにち、画面にかじりつく僕らを見た大人は、笑ってこう呼んだ。
「おいおい、テレビ小僧たちが今日も集まってるな」
「おいおい、テレビ小僧たちが今日も集まってるな」
だが。
本物の「テレビ小僧」は、僕らのほうではなかったのだ。
本物の「テレビ小僧」は、僕らのほうではなかったのだ。
ある日の放課後。番組の合間の砂嵐の中、ブラウン管の奥に、誰かがいた。
青白い顔をした、見知らぬ子どもが、画面の内側からこちらをじっと見つめている。
青白い顔をした、見知らぬ子どもが、画面の内側からこちらをじっと見つめている。
そいつは、ガラスにぴったりとへばりつき、 呪文のようにつぶやいた。
「ねえ……僕と友だちになっておくれよぉー……」
「うわぁあー! 化物だぁーっ!」
誰かが叫び、僕らはランドセルを揺らして一目散に逃げ出した。
それ以来、テレビの中に怪異が出るという噂が広まり、あれほど盛況だった電気屋の前からは誰もいなくなった。
それから長い年月が経った。
二〇二六年、液晶テレビが普及した現代、テレビ小僧の噂を耳にすることはない。
理由は簡単。テレビがブラウン管ではなくなったから。
あの頃のブラウン管は、電源を切って真っ暗になった後、画面の中央に、しばらく白い光の点がぽつんと残ることがあった。
静まり返った部屋で、僕らをじっと見つめていた、あの白い光。
――そう、あれこそが、テレビ小僧の正体だったのだ。
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