犬かき


 多くの動物は、前足で水をかいて進む。
愛犬の太郎も、やはりそうやって進んだのだろうか。
散歩中、近所の水路に落ちた。太郎が水に浸かったのは、後にも先にもその一回きりだ。初めての事態に、彼はただ途方に暮れていた。
両手を差し出すと、ようやく前足を上げてきた。僕はそれを捕まえ、抱き上げた。
今、彼は天国にいる。

「ぼく、泳ぎたかったです」

そんな声が、どこからか聞こえた気がした。
彼は最後まで、犬かきをすることがなかった。

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