忠犬


僕の愛犬の名前は「太郎」と言った。
いつも、「太郎」と呼んでいた。
呼ぶと寝ていても顔を上げてこちらを見た

「なんか… 呼びました?」

そんな感じの顔をしている。
本当に可愛い。
僕が一人で仕事に行き詰まって部屋でふさぎ込んでいると、足元に寄ってきて座り込んだ。
「お父さん、元気出してよ」
そう言っているようだった。
僕の足の甲の上にお腹を乗せてきた。
ほんのり温かい。
あの頃の温かな記憶がよみがえる。
太郎は天国に逝った。
温かな毛に触れなくなって数年が経ったけど、触れられないけど触れていたときの感覚がこうしてよみがえる。
「きみはいつだって温かいな」
あの頃と同じで僕の心のなかにいてくれる。
「きみは忠犬だね」
ワン、と鳴いた声が頭の中で響いた。

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